K系音の行方

上の階の出す音はわかる。隣りの出す音もわかる。
地下のライブハウスから伝ってくる音もわかる。
上の階の風呂水が染み出してくる気配さえもわかる(3回)。
でも奇妙に近く、しかも乾いた感じのこの音は、何?
カリカリとかコリコリとか、なんかK系のこの音。
最初は天井。それから押し入れの奥。それから、
キッチンと和室の間の壁(すぐそこ)。
そう、もちろんわたしは知っている。
それはネ・ズ・ミ・
なぜだか近所の人に、「西洋館」と呼ばれていたG県のわたしの実家。
その家でお馴染みだったのよねえ。
ねずみ撃退のために猫を飼ったのが、猫とのつきあいの始まりだったのさ。
あっという間にいなくなったんだから、ネズミ。
途方もない世代交代を経て、ネズミに、
猫が天敵というDNAがなくなったかどうかは知らないけど、
東京のボロマンション猫には、ネズミ撃退の力はないらしい。
ただびくびくと音源を虚しく見つめるばかりで声も出やしない。
さっきからK系音がして、わたしは落ち着かないけど、
猫は爆睡してるもの。