花の名前

こないだ実家に帰ったとき、元々のわたしの部屋で
夜ぼやっとしていたら、ほぼ納戸状態の部屋の片隅に、
小さな紙の箱を見つけた。ふと開けてみたら、三人官女
一人が入っていた。黒髪が乱れていたけれど、いいお顔。

わたしが生まれたとき、誰かにいただいたかしたものだと思う。
昭和30年代のお雛様。まだ西洋館と呼ばれた家では、毎年
この時期、段々を組み赤い布をかけて並べ、お披露目した
ものだ。
牛車やぼんぼりなんかの小道具もあったっけ。

もう、それらは、ずっと仕舞われて、出番がないはず。あの箱
だけ無造作に置いてあったのは、なんだったんだろう。
その時はすぐにあった所に戻しておいたけれど、今、気になって
仕方ない。

その影響なのか、今朝は、ちらし寿司をつくって、お弁当にした。

花の名前を多くは知らないのだ。
またスクーリングの話。
テーマが「花を創る」だったため、教室には花屋さんの店先の
ように、一種類の花がひとつの容器にまとまって挿されて
ずらりと並んでいた。
チューリップ、バラ、スイートピー、ボケ、ミツマタ、ネコヤナギ、
カラー。他にもいろいろあったけれど、わたしにわかるのはこの
あたりまで。ハワイっぽい花とかは、見たことはあっても名前は
わからなかった。

すると、隣りのK氏が「この花の名前はなんですかな?」としきり
に問うてくる。
これが、あれもこれもと何度も繰り返された。知ってる花の名前
はもちろん教えるけど、知らないものも多い。

知らないのはもどかしいし、知れば気が済むのだから、聞きたい
気持ちはよくわかる。
実家の前の川の中州の鳥の名前が知りたくて鳥のガイドブック
を買ったわたしも、K氏とおんなじだもの。

でもそれは本当に知ることとはちょっと違うかなぁ、と感じる。

名前がなかったものに名前をつけると?
「フリーター」も抵抗があったが、「ニート」とはなんだ。
名前を持ったとき、持たないときとは違う顔を持ちはしないか。

誰のためだか、都合よく括るために名前を付けるなら、名前
なんかない方がいい、いまだ名前を持たない部分にこそ
こだわりたいと思った。
美術館に行ってまずタイトルを見るのは、最近やめた。