「おしっこ野郎」のこと

我が家の猫は、来たときすでに生後半年くらいも経っていた。
どうやら、前の飼い主が面倒見きれなくなったんだ、
と気がついたのは、おしっこの始末がまったく
できてないことがわかったからだ。2日に1回は、
トイレ以外でしてしまう。
2泊旅行をしたとき預けた家でも布団の上に
粗相をしてしまい、それ以来、ふたり揃って旅行はしなくなった。

ちょっと置き忘れた洗濯物、座イス。
ソファはついに色も変わってしまい、捨てた。
ダウンジャケットをはおって外に出たら、背中にされてて
しずくが垂れた。電車の中で肩身が狭かったっけ。
しかも自慢じゃないがわたしは名うての整理べただ。
でも、それにしても。
お客様のコートも犠牲に。危ないので、この頃ではあちこちに
フックをつけ、空中から下げるようにしてる。

2月に自転車の事故で大けがを負った夫は、
嗅覚がまだ完全に戻っていない。
「これ、匂い嗅いでみて」と言って、きょう着るつもりの
シャツやパンツをわたしの鼻先に突きつける。Tシャツはとくに
トイレとしてお気に入りなので、チェックは怠れない。

こんなしょうもない猫であるが、顔はかわいいし、
手足の長さ、体の優美さはすばらしい。嫉妬深いところも
わかりやすくて、好き。
しかも、なぜだか無臭でもある。おしっこの匂いは
ひどいのに、天は二物を・・・って、ちょっと違うか。

すてきな名前も持ってるけれど、
わたしはこの猫をときどき「おしっこ野郎」と呼んでやる。
愛をこめて。