外は雨と風が強くて、嵐みたいだ。
9時半まで残業して会社の外に出たとたん、後ろの髪が
そそげ立った感じがした。誰かが頭のすぐ後ろで、
強く息を吹きかけたみたいに。
歩いてる間中、ずっとそんな感じだったので、
思わず「触んないでよ」と声に出して言ってみたりして。
へへっ、変か。疲れてるからねえ。

子どものころ、冬になると毎晩、強い風が吹いた。
浅間おろしというやつだ。家の裏の防風林が、
今日みたいにごうごうと鳴っていた。
西洋館だけに雨戸はないし、窓ガラスの桟は細かく
仕切られていて、そのひといひとつに
見知らぬ顔が張り付いていやしないかと
子どもらしい妄想に取り憑かれていた。

その頃は、雨上がりに水たまりができた。
そこに、雲と電信柱と電線が写り込んでいるのが
おもしろくて、飽きずに覗き込んでいた。
靴が水に浸ったら、引きずり込まれるかもしれない
なんて、思っていたっけ。

宇宙は相似形になっていて、自分とよく似た人が
あの空の彼方にいる、という考えに凝っていた時期も
あった。
そんなんで、「マトリックス」、好きです。って唐突?
スター・トレック」も昔のテレビシリーズから、
大好き。

すっかりいい大人になったけど、考えることは大して
変わってないなんて、子どものころには想像もできなかったよ。