朝はすばらしい天気だったけど、だんだん怪しくなった。だらだらと
本を読んでいたらサーッと雨音がし、次いで静かになった。
外を見ると、東の空が暗い。西は雲が薄くて、その境目が、ちょうど
真上の空にある。新宿の高層ビル群はまったく見えず、ただ近所の
工事中の重機がそそり立つのみ。その先端に下がっている重りの
蛍光の黄色が、バックの濃いグレーの空に栄えて、うっとりする。

M砂ちゃんと、6時に上野で待ち合わせていたので、5時過ぎ
出かけるときまた空を見ると、雲はすっかり薄くなっていて西日が
射していた。そして、東には、虹が!

上野は、変わった。すごくきれいになって、駅の中で迷う。
ふいに外に出たら、こじゃれたカフェがあった。テラスも完備だ。
これが渋谷あたりなら、外国人が数人いて、インターナショナルな
雰囲気を醸しだすところ。
一人もいなくて、さすがに上野である。

カフェの入り口に、ウェイティング用のいすが置いてあった。
そこに奇妙なカップルが。

50代くらいの苦み走った女性が、スーツをきっちり着こなして、
腕を組み、たばこを吸っていた。その横に、かなり崩れた感じの
痩せた男性。彼女にしなだれかかっている!
し、しか〜も!彼は、彼女の胸に手を置いているぞ!
彼女は堂々たる姿勢を崩さず。

わたしは、はっきり言って、目が釘付け。彼女とばっちり目があった
けれど、さすがに注視するわけにもいかず。歩きながら、どんな状況
なんだろう、と考え続けるけど、陳腐なものしか思い浮かばない。
ひもが酒をねだる図とかさ。

あとでM砂ちゃんに話したら、
「やっぱり、上野に来なけりゃ、東京はわかんないよ、渋谷や新宿じゃ
ないんだよ」って。