気をきかせたつもり

夕方6時ちょっと前、気づくと、来月定年退職するオギノ
さんがわたしの側に立っていた。

6時までに送信するものがあってバタバタだったわたしは、
何かモノ言いたげな様子で立っているオギノさんにちょっと
当惑。そこで、ハッとあることに気が付き、袖机からナプ
キンが入った小物入れを出し、「これですよね?どうぞ」と
言って手渡した。急なことで、持ち合わせがなかったんだと
勝手に解釈したわけで。

それからしばらくして、送信を無事終え、ほっとしたわたし
はオギノさんのところに行った。すると彼女はにやにや
しながら立ち上がってわたしを物陰に連れていくと、
「さっきはごめんね。タバコ喫いに誘いに行ったのよ。
それにあれは、もうとっくに上がってるんだよ、ハハハ」
と笑うのだった。