方言は死なず

会社の東側の窓は、新宿中央公園に向かっている。いま
窓一面の緑豊かな木々は、森のように分厚く、都庁も遠く
なったように感じる。
センチュリーハイアットなどは、最上階が見えるだけで
あとは、ずんずん伸びた枝葉に隠れてしまった。
風が吹くと、葉が裏の薄い色を見せるので、ことさらに美しい。
会社に、公園の定点観測に行っているようなものですね。

この頃T碕さんがちょっと苦手、ていうか天敵みたいに思う
ときがあって・・・、ふたりだけでお昼は重い、と感じたある
日、隣りの俗物O係長を誘った。

T碕さんと1階のロビーで待っていたら、課長同伴で登場。
この会社に入ってから、男性とお昼は初めて。っていうのも
ヘンだけど、いないんだから、オトコ。なんかちょっと緊張
してしまいましたがな。

こういう場でO係長は次々話題を提供してくれるので、わたし
たちはそれに乗っていればいいようなものだけど、たとえば
先日の宴会の2次会でカラオケに行ったという話になり、課長に
何を歌ったか聞くと、「サザンのみんなのうた津波」という
返事。

わたしは大昔、男性の同僚がカラオケで上手に「エロチカ・セ
ブン」を歌ったことを思いだし、選曲にはTPOと個性が表れる
なんて考え(当たり前だけど)、次に、何日か前、テレビの特番
で、爆笑問題の太田さんがサザンと佐野元春を巡る、田中さんと
のファンバトル?を語っていたのがむちゃくちゃ面白かったのを
思い出し・・・

何か話したいとアタマを巡らしていたのに係長は、「この4人
は同じ世代だから、話はあうよね」とかって、彼女の大好きな
世代論に持っていってしまった。
物足りなかった。

そのうち話題は、彼女の部下のH氏に移り、優先順位がわかって
ない、というようなコトだったんだけどいきなり、
「そんなことすらっといいんだよ、それはあとでも、ってこと
が多くって」
わたしは話の内容より、「すらっと」。この言葉に、軽いめまい
を覚えました。

これは群馬の方言で「しなくても」という意味なんだけど、彼女
の出身地秩父は、どうやら同じ言語圏なんだね。実はこういう
方言がわたしを群馬から東京に来させたようなもので(^^;
本当に苦手なんさ。
(「なんさ」。これも方言。でもこれは好きなので、群馬で
は使う)いやもちろん言葉に罪はないけどね。
自分的には25年くらい封印して忘れ去っていたので、びっくり
した。まだ生きてたんだ、この言葉って感じで。