スクーリング話まだ

仕事が忙しくなってくると、京都の日々もどんどん遠くなって
しまうなぁ。

9月2日、ジャンクな朝ごはんを部屋で終え、大学に向かう。
バス停で、挨拶してくれる人がいた。よく見ると、3日前に
ホテルで、洗濯の話をした人だった!話をしてみたら、同じ
大学に向かうところだと言う。
彼女は、芸術学コースで、美術史を聴講している。
しかも、札幌から来ていると言うので、びっくり。

きょうからは、木炭で石膏をデッサンする。今度の先生は
小柄な柔道選手という風情の30代の男性だ。外見からは
意外な、緻密な植物をモチーフにしているという。

メンバーはたったの6人。やはり9月に入り、社会人は休みを
とりにくいからなのだろう。リタイアしたおじさま、主婦、現役
の学生、仕事を持っているのはわたしを含めてふたり。年齢
はやはり20代から60代。

木炭は初めての経験だ。木炭の芯を抜く、という作業で
始まる。
石膏は2体。ラボルトメディチ。どちらかを選ぶ。前回の
牛骨で、モデル選びは慎重にしようと痛感していたので、
感情移入ができそうなメディチを選択。なんでも、通称
メディチは、フィレンツェメディチ家のお墓に、ミケラン
ジェロが彫刻したものとか。

ふたりのひとが、さっそく席を占めた間に分け入り、イー
ゼルを設置する。午前中は、集中集中。でも、お隣りの
若いお嬢さんがしょっちゅう携帯を盗み見ているのが、
ちょっと気になってしまう。

午後になり、先生がわたしの絵を見て、「芯の強さと、
融通の利かなさを感じる」と言われ、動揺してしまう。
ふ〜。絵って、恐いわ、ばればれじゃん。

6時まで無我夢中。ホテルに戻り、もうジャンクなご飯に
耐えかねホテル1Fのレストランに行ってみたら、今朝の
彼女がいたので同席させてもらう。ビールを飲み、愉快に
おしゃべり。やっぱり、おしゃべりは必須だわ。

翌日は、顔に集中しだしたけど、全然似てこないので、
あせる。
「宝塚みたいだ〜」とか、突っ込みを入れられる。
似てきたかと思うと遠くかけ離れて…。目の位置をあげたり
下げたり.
夕方の一回目の合評では、
「昼間は似てきたのに、顔に集中しすぎてる。よく観察して。
あした一日で間に合うか、ぎりぎりだね」

作品を近くで見るのと、遠くで見るのでは、大違い。参った。

夜、また1Fのレストランに向かうと、例のコンドウさんが、帰っ
てきたところにばったり会った。縁があるって、こんな感じ。
おもしろい。

京都最後の夜は、またまた寝付けず、苦しい。会社の同僚
コバヤシさんが浅い夢に出てきて、それからは、ますます眠
れなくなった。なぜコバヤシさん?

最終日は、朝のバスで、札幌のコンドウさんとお昼の約束。
こだわりのおそば屋さんに行ってみる。小鉢のお漬物が
妙においしい。あれは、なんなんだ、あのひねこびたような
不思議な味は?
コンドウさんとは再会を約束して、握手でお別れ。この人と
知り合えたのは、大きな喜びだった。

午後は3時半から合評会。先生がもうひとり来られて、ひとり
ひとりへの評に、30分弱もさいてくれた。

わたしのメディチは、邪悪な顔になってしまった。邪霊が
取り憑いているみたい。がっくり。まあるい絵を描ける人が
うらやましい。

先生は、もちろんそんなことは言わなかったけどね。でも、
「あなたは、平面でモノを見る人だね〜」なんて言われると
薄っぺらな人間だと言われているみたいで、イタイ。
子どもの頃から、一条ゆかりのまんがの模写をして、
くっきり輪郭を描く訓練ばっかりしてたしな〜。

「かっこいい絵を描いてくれると思うんで、期待してます」
なんてさ、最後は少しだけ救われたけど。

美術の大学に入るなんて、なんだか酔狂なことを始めた
感じもあった。

けど、今回、アトリエで一緒になったすべての人たちがその
酔狂な仲間たち。先生たちの実物に会ったり、直接指導を
受けられたことも、よかったな〜。

大学の建物を見たり利用したことも、有意義なことだった。
東京にも通信をやってる美大がある中で、京都の大学を
選んだことが、特別の意義のあることに、うっすらとだけれど、
思えた。

でもでも、なるべくなら、東京でスクーリングを受けたい。
ホテル暮らしは、無味乾燥なんだもの。

6時過ぎの京都は、晴れ渡った秋空が高くて気持ち良か
った。
金色の飛行機雲が、美しく夕空を切り裂いていったよ。
京都駅では早くもすっかり夜になっていて、今度は月が
きれいだった。
のぞみに乗って東京へ。

こんな旅。あ〜、おもしろかった!