日付が昭和

土日で実家へ。母はダンスのサークルで人間関係に悩まさ
れているらしく、しょげていた。周りが強い人ばかりのように
思えて気後れしたり、挑発に乗って暴言を吐いたりしたらしい。

うっかりと人を傷つけてしまったり、逆に傷ついたり、傷ほどで
なくても何となくじくじくすることって、時たまある。
でもすぐ新たな気がかりが発生して、以前のじくじくは忘れら
れていく。

たとえばわたしの場合はこうだ。
日曜と月曜の途中までは母のことばかり考えていたけれど、
大学の静物画の添削が届いてからは、よい評価に有頂天。
火曜の朝、猫のナナオが体調が悪いのに気づいてからは、
猫の結石のことでアタマはいっぱいになった。
病院に連れて行って治療してもらってから、遅刻ぎみに会社に
駆けつけると、そこからはもう、「お父さん、アタマ押さえて
ください!」と看護士さんに言われた夫のことも、カテーテル
入れられたかわいそうなナナオのことも遠のいてしまった。
許せナナオ!

でも母のいる世界には、次の出来事はなかなか起こらない
みたい。

そういえば母に、天皇ご夫妻に遭遇した話をしたら、一瞬昭和
天皇のことだと思ったらしい。「あたしの時代はさ」と強がりを
言っていた。なるほどそういうものかもしれない。

日曜に遡るけど、家にいても母のじくじくは直らないので、高崎
近郊の群馬の森にある県立近代美術館に誘った。
ここにもモネやルノアールがあるのだよ。

帰りは新町までバス。途中、浅間山が美しく見える場所があって
わくわくした。わたしが「噴煙が右に流れてるね」と母に言うと、
急に運転手さんが話に加わってきた。
「へ〜。あれ、雲じゃなくって噴煙ですかぁ」って。
地元の人に感心されても困るけど。