改めてスクーリング話。

大きな机に、ふたりが向かい合った。こういうとき、どんな
人と出会うかが、スクーリングでは重要だ。
今回、遅刻寸前にわたしの前に座ったのは、北海道の人で、
小柄でチャーミングな、日本画コースの先輩だった。
今、卒業制作に取り組んでいるとか。

フレスコ画制作の最初の行程は、拡大コピーだった。
ふたりで計算して、近所のコンビニに行って、コピーをとった。
原紙を四つ折りにして、それぞれコピーする。念のため、中央
部分もとった。

誰よりも早かった。
午後、それをつき合わせて、原寸大の型紙を作る。
そのとき彼女が、一枚足りないのに気づいた。

先生に断って、もう一度コンビニに走り、やれやれと型紙作りに
とりかかると、今度は切りすぎて、部分的に欠けている。
わたしが、さっき盛大にゴミを捨てていたなと思ったので探すと、
見事にあったあった。「あ〜よかった!」と一安心もつかの間、
今度は、1センチ×15センチほど、やっぱり切りすぎて欠けて
いる。また青くなったけど、先生に相談すると、「表裏からテープ
で補強しましょう」ということで解決。
その頃には、わたしを含め彼女以外は、型紙に、ピンで輪郭に
穴を開けていく、という行程に進んでいた。

やっとそこに到達した彼女は、矢のような早さでポツポツどころか
ポポポポというスピードで穴を開けていく。

穴が小さ過ぎると、そこから顔料を落とし込んでいくのに不都合
という先生の説明を聞いていたよね〜とわたしは、内心心配
でしようがなかった。

心配は大当たりで、やっぱり、顔料は、うっすらとしか、モルタル
に落ちていない。
もう、6時を過ぎて、周囲が帰り支度の中、
「わたしいつもこうなのよね〜」
と初めて、ため息をついた。そして、改めて、穴をもう一度ポツポツと
開け始めた。

翌日聞いてみると、7時くらいで帰ったわ〜と、のんびり話した。
しかしそこからが早い早い。さすがに卒制に取りかかるだけの
経験。彼女が選んだのはボッティチェリの水瓶を持つ美女。
紫の衣装の色が絶妙だし、優しい表情は、その絵柄を選んだ
誰よりもうまい!

夕方、その日の分の行程(ジョルナータ)をきっちり削りとる作業の
とき、何を思ったか、紫の衣装部分をごっそり削ってしまったのだ!
「あ〜。勘違いしちゃった〜」というか細い声・・・。またびっくり。
あんなにきれいな紫をなんでまた!?

意気消沈かと思いきや、さほどのショックも見せず、「晩ご飯
食べて帰らない?」などとわたしを誘ってくれさえした。
すごい余裕。

3日め。もう、わたしは心配しない。だって、たいてい何とかして
しまうんだもの。雑談に、卒制のテーマを聞くと、
「ダテカンバなの。人によっては気持ち悪いっていう木なんだけど。
でも問題は、その木は標高の高いところにしかないから、スケッチ
のとき熊が出ないか心配でね〜」
と言うのだった。

夕方、各自梱包を始める。箱を用意することになっていたけれど、
彼女は、ひもなどの準備だけで箱はない。でも、そこらに転がって
いる段ボールなどなど調達して、なんとか形にするのだった。

最後の最後、ナイロンテープと留め具の使い方がわからない〜と
言い出し、なんという名前か忘れたけど、わたしはそれは昔仕事で
お手のものだったので、留めてやり、しかも、その上、ビニールひも
の結わえ方もわからないと言い出したのでそれも、手伝うことに
なった。

ひもを結わえるとかけっこう好きなので、私的には役にたって
よかったし、何より、こういうふうに、かわいく助力を得られる人
をおもしろいと思った。

そういうことを面倒くさいと思う人だって、絶対いるもの。
彼女を手伝わなければ、新幹線2本分早く東京に帰れたかも
しれないけど、全然オッケーだったよ。